1.製作のコンセプト(セルフテーマ)

0→1 (ゼロイチ)

この世は様々なものが巡りゆきます。春に土から芽吹いた若葉は葉を拡げ、梅雨の雨に打たれても、烈日に晒されても、その生命の最高潮に花を咲かせ、実を結び次世代に命をつないだ後、霜雪に鮮やかに葉を染めてのち、人知れず土に還っていきます。

花の美しさは言うまでもなく、私たちは季節折々の草花の懸命に生きる姿に四季折々の感動を与えられます。誰よりも早く咲き芳しき冬の白梅、春栄誰ぞ慕わざる百花斉放の春の山桜、盛り上がるが如く様々な緑の貌を見せる夏山の勢い、錦秋の華やぎののち美しく野に敷く落葉の静寂の秋。

今回のカレンダーでは、12の月に12の色彩を割り振り、それぞれの季節に美しい姿を見せる花たちの姿をカラフルに映し出していきたいと思います。

0→1輪の花たちそれぞれが映し出されるように

0→1度きりの花たちの懸命の生に敬意をこめて見つめ

0→1つの季節を渡っていく瑞々しさをとどめられるように

想を練っていきたいと思います。2026年は弊社が100年目から101年目に入る年。いろいろな新たな1歩を踏み出す人たちへ花でエールを贈れるように。

 

2. 作品の開設

7月 みどり

7月を選んだのは制作した時日が7月であったからです。そしてあえて彩りがないと思いがちな緑色を選択しました。緑色は実にカラフルです。どんな色の花にも緑色の葉がついているにもかかわらず、その緑色はいずれも違う彩りをもち、重ねて使うことで実に重厚な深みを感じることができます。私は作品に様々な葉を用いることがとても好きですが、僕には葉のそれぞれが、いろいろな花の色に劣らない魅力を感じています。そこに広がる風景の一部を切り取って味わえるような涼やかさを意識して製作いたしました。

 

3. 花を挿すこころ

 日常生活の忙しさに心を奪われがちな私たちは、ある時にふと本来の自分の姿を取り戻す瞬間があることでしょう。遠く故郷を離れてそこに桜を見るとき、真夏の日差しに凛と立つ向日葵を見るとき、過ぎし日に過ごした大切な人の思い出を蘇らせるでしょう。花に季節を感じ、無機質な空間にある花に心を癒され、大きな励ましを受けることでしょう。私たちは四季の花を扱い、人生の折々に花を飾らせていただくという大変に幸せな仕事をさせていただいておりますが、花に励まされているのは何より自分自身なのではないかと感じています。そこで今回は作り上げた作品の中に咲く草花に着目し、ちいさな一輪をフォーカスすることで、社会の様々な場所で精いっぱいがんばる人たちの「一凛」を照らし出せたら幸せだと思います。どうぞよろしくお願いいたします。